【プロフェッショナル対談】
日々の努力が、
信頼をつくる。
約113,520台(2025年3月末時点)のエレベーターのメンテナンスを手がけるジャパンエレベーターサービス(JES)の設立者で会長兼社長CEOの石田克史と、58歳となった今もJFL・アトレチコ鈴鹿クラブで現役を続けるキング・カズこと三浦知良選手。
2018年には、メンテナンスの大切さ、そして見えないところに宿る信頼について語り合った二人が今回、あらためて「続ける」という価値、そして未来へ向けた進化について語り合った。
アトレチコ鈴鹿クラブ
三浦知良
1967年生まれ、静岡県出身。ポジションはフォワード(FW)。2024年よりアトレチコ鈴鹿クラブに所属。最年長プロサッカー選手であると同時に、Jリーグ発足当時からプレーを続ける唯一の現役選手として活躍中。
メンテナンスという信念の深化
石田 前回の対談を経て、JESでは「継続と進化」というテーマが、社内でより広く共有されるようになりました。おかげさまで社内外からも多くの反響をいただき、改めてメンテナンスという仕事がもつ意味を再認識いたしました。そこで今回はカズ選手の視点から、日々の積み重ねについてお話を伺えればと思っています。
三浦知良 僕自身も、前回の対談でメンテナンスの重要性について新たに考えるきっかけをいただきました。今回はその続きとして、さらに深く掘り下げてお話ができたら嬉しいです。
エレベーターの裏側に見た
「安心の理由」
石田 当社は設立以来、エレベーターのメンテナンスを通じて、人々の安全・安心な移動を支えてきました。エレベーターは、常に安全に動き続けることが求められる社会インフラです。安全運行が何よりも求められるからこそ、私たちは強い責任感をもって、日々の点検・整備・改善に取り組んでいます。カズ選手にも、事前に当社の取り組みについてご説明させていただきましたが、率直なご感想はいかがでしたか?
三浦知良 リモートでエレベーターの動きを常時監視し、僅かな異変も逃さず整備していくという話には、正直びっくりしました。今や建物にエレベーターは当たり前の存在ですよね。それが「止まらずに動いて当たり前」であるために、裏でどれだけの努力があるのかを知る機会って、実はなかなかないと思います。日々の積み重ねが「信頼」につながっているのだと実感しました。
僕たちアスリートにとっても、メンテナンスは非常に大切なテーマです。僕も週に6日は練習後や試合後に、さまざまなメンテナンスを欠かしません。トレーニング以上に大事だと感じることも多いですね。「あれ、ちょっとおかしいな」と感じたら、すぐに立ち止まって体と対話するようにしています。その積み重ねがケガを防ぎ、現役を続ける力にもなっています。
©アトレチコ鈴鹿クラブ
ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社
代表取締役会長兼社長CEO
石田 克史
1966年生まれ、東京都出身。独立系のエレベーターメンテナンス会社を経て、28歳のときに同社を設立。2015年に代表取締役会長兼社長、2017年に代表取締役会長兼社長CEO(現任)。
「続ける」ことが生む、
プロフェッショナルとしての価値
石田 カズ選手は現役のサッカー選手として、最前線に立ち続けていらっしゃいますが、「同じことを続ける」ことについてどのように考えておられますか?
三浦知良 実は、「毎日同じ練習をしていてよく飽きませんね」と言われることもあります。でも僕にとっては、同じことの繰り返しではなく、毎日が新しい挑戦なんです。「もっと上手くなりたい」「もっと成長したい」と思って取り組む練習には、同じルーティンにも毎日新鮮な発見がある。それが選手としての喜びや、やりがいになっています。自分の中にある理想像に少しでも近づくために、日々努力を重ねています。
反復練習は単調に見えるかもしれません。しかし、どこを意識し、何に気づくかによって、その時間の価値は全く変わるんです。その気づきの積み重ねが「進化」につながるのだと思います。
石田 まさにJESの仕事も同じです。エレベーターは生活に不可欠なインフラですから、日々のメンテナンスで違和感にいち早く気づき、対処していくことで少しでも長持ちさせる。それが私たちの価値につながっていくのです。最新技術も活用していますが、エンジニアの「職人の目」や「勘」も重要です。そのあたりは、カズ選手の世界とも共通していると思います。
日本では、エレベーターのメンテナンス体制が非常に整っており、世界的にも高く評価されています。海外では点検頻度が低く、対応にばらつきがある国も多いのが実情です。そうしたなかで、私たちは日々の点検・整備を重視し、安心して使ってもらえる設備を維持することを使命としています。

三浦知良 年齢を重ねるにつれて、トレーニングやケアの方法もアップデートしています。30年来僕の体をメンテナンスしてくれているトレーナーもいれば、比較的新しいトレーナーもいますが、みんなが日々新しい知見を共有してくれる。昔の方法が今でも有効な場合もありますし、逆に見直す必要が出てくることもある。その取捨選択が大事だと思います。
若い頃に取り組んでいた練習の中には、今の自分には不要になったものもあります。昔の方法でも今も効果があると感じるものは残している。その見極めが大事で、これは、御社の「リニューアル」の取り組みとも共通する部分ですよね。
石田 おっしゃるとおりです。丸ごと新しくするのではなく、使える部分を残しながら、より安全・安心・エコな状態へとアップデートしていく。それが、今後ますます求められるリニューアルのあり方です。人間の体も、機械も、全部が新品ということはありえません。でも、適切な判断と技術があれば、十分に現役を続けられる。その姿勢を、私たちはリニューアルという形で実現していきたいと思っています。
三浦知良 サッカーは地域に根ざしてこそ意味があるスポーツです。Jリーグのような大きなリーグだけでなく、JFLや地域リーグにも多くのクラブがあります。それぞれが地域の活性化に貢献し、子どもたちに夢を与える活動をしています。僕も2024年から約11,000球のボールを全国の子どもたちに寄贈しています。サッカーを通じて社会とつながる意義を、常に感じています。
親子や友人、初対面同士でも、同じチームを応援することで自然と会話が生まれ、笑顔が広がる。僕たち選手は、そうした「つながりの場」を提供することも役割のひとつだと考えています。
特に、長年応援してくださるファンの存在には本当に感謝しています。ファンの皆さんの思いに応えるためにも、僕は常に100%の準備をして試合に臨んできました。御社のように、見えない日常を支えている仕事にも、まさに同じような誇りと責任感があるのではないでしょうか。
石田 おっしゃるとおりです。エレベーターのメンテナンスは、人の移動を支えるという意味で、目立たないけれど社会に欠かせない仕事です。当社は、和光市の施設を社会科見学に開放したり、消防署の救助訓練に使ってもらうほか、全国展開を果たした後は地方でも安心して働ける場を提供し、地域雇用にも貢献しております。
©アトレチコ鈴鹿クラブ
メンテナンスは「自分との対話」でもある
三浦知良 ケアやトレーニングは、言ってみれば「自分との対話」の時間なんですよね。体の違和感に気がつき、今の自分にとって最適な手法を選んでいく。実はこれ、エンジニアの方が機械の音や動作の違和感に気づく感覚と、近いものがあると思うのですがいかがですか。
石田 そうですね。点検のとき、音ひとつで異常に気づけるエンジニアもいます。ただ、「この動きは少し違うな」と経験から判断できるようになるには時間がかかります。技術と経験、両方を兼ね備えた人材を育てるのも、安全を守る私たちJESの役割です。
三浦知良 そうやって蓄積される知見や技術が、人を守るんですね。それはまさに「信頼」を築く営みですね。
石田 私たちはこれからも、「安心して任せてもらえる」存在であり続けるために、より進化をしてまいります。今日のお話も、非常に刺激を受けました。ありがとうございました。
三浦知良 こちらこそありがとうございました。見えない努力を惜しまず、信頼に応える姿勢を大切にしながら、これからも自分なりの形で社会に貢献していきたいと思います。ボールひとつが、世代や地域をつなぐきっかけになる——そんな未来を信じて、これからも歩みを止めずに進んでいきたいです。
(2025年6月16日JES本社にて取材)